引越しアート・プロジェクト

Duration : 12:00-19:00(定休日:月曜日)

Opening : 2020年3月6日(土)~2021年3月21日(日)

Venue : 東京都港区台2-2-4 クリニックモール3F

Tel : +81 (0) 3-6426-0726

Web : https://shunartdesign.com/

Artist : SHUN

シュンアートギャラリー東京では、2020年3月6日(土)より、
Shunによる「引越しアートプロジェクト-Memory From Paris-」展を開催いたします。
当ギャラリーオーナーでもあるShunが、パリ留学中に制作した、
未公開作品を含む数十点を展示します。


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引越しアート・プロジエクト ―モノと記憶―
~Memory from Paris~

科学者は時間は存在しないという。しかし、私達は毎日24時間の中を生きている。

大概の人は、朝起きて出かける時間に合わせて朝食を取り、慌てて出勤し、会社の近辺でランチをし、出勤時間が終わる頃に帰宅し、時間を決めて就寝をする。日にちが変わったら、またそれを繰り返すのだ。だけど、科学者は時間は存在しないという。
なのに何故、時計は作られたのか?

コロナ禍で生活は大きく変化した。年明け早々、長い時間ほったらしにしていた九州のアトリエの整理に出掛けた。そこには、パリ留学時代の荷物達が置かれていた。作品、書籍、服と諸々のモノたち。

写真は勿論、書籍や服やアクセサリーの数々、特に手紙達はその「モノ」に記憶を宿していた。すでに16年という時間が流れている。
写真の中の自分は痩せっぽちで、服はSサイズ(今は入らない)、そして学生時代の経済学書と服飾デザイン関係の参考文献、企業調査に出かけた時の記録ノート。
九州で二人の友人のヘルプで倉庫を片付け、半分ほど処分処理し、東京に届いた際に更に大量に処分し、整理する引越し。今、何を切り捨て、何を選択するか。時間は存在しなくても人生は選択の連続なのかも知れない。必死で守ってきたものは、価値あるモノだったか。今、自分の価値をわかる人と一緒にいるか。自問してみる。
なかなか捨てられないので、スタッフの助けを借りていろいろと「捨てる」行いをしている。インスタレーションを作っているとなんでも素材や材料に見えて捨てられないし、服は古着だし、素材になる。

ジャッジをしないで「来るもの拒まず」をやっていたら、生活の質が落ちる。変な「モノ」に振り回される羽目になる。

パリ留学が終わり、日通さんに引越しを頼んだ時のことを思い出す。パリのアパートのキッチンの引き出しからごそっと出てきた壊れた電球達。パリの電球はやたら良く壊れたが、留学時代に壊れた家の電球を溜め込んでいたのだ。引越し屋さんに「これ、ゴミですよね」と聞かれ、答える前にあっさりと処分されてしまった記憶がある。インスタレーションにし、展示会で一度見せてから画像を残して捨てたかったが、壊れた電球を段ボールで運んで帰るわけにはいかないのも事実ではある。

「モノ」に染み付いた「記憶」の断片達。あの時にあそこの蚤の市で1ユーロで見つけた3世紀前のアクセサリー、ゴルチエの香水瓶達、手紙の束の中には誰だか全く覚えていない人もいる。そして、深刻に愛していた記憶も勿論ある。しかし、永遠はない。時間はすべてを変質させるかも知れない。パリの小さなバルコニー、そこにはいつもアルミ製の花瓶に花が飾られていた。200近く経った古い建物はエアコンは使えず、扇風機を使っていた。

「モノ」に宿った古い記憶達、作品も文章もその誰かに言いたいことをすべて言うわけにはいかないので、その表現は有用で役立つのかも知れない。それがないと、厳しいこの世の中をやせ我慢し、壊れていたかも知れない。壊れず消えず、もがきながらも何とか生き延びているのは、作品表現で「世の中」に言い切れなかったことを思いっきり吐き出し、叫び、泣き弱っているからか。自分でも良くわからない。

あなたに言いたい最後の言葉。「愛する人がいるのなら、その胸に抱いておやり」あ。歌詞だった。大好きな加藤登紀子の歌の。
「モノ」は捨てられても「記憶」は残る。科学者は時間は存在しないというにもかかわらずだ。

                                                  上海アトリエにて Shun
                                                         2021年3月

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