ヒラタシノ個展:俯瞰した地図

Duration : 12:00-19:00

Opening : 2022年4月1日(金) ~ 5月8日(日)

Venue : 〒 135-0091 東京都港区台場 2-2-4クリニックモール3F(東京オフィス)

Tel : 03 6426 0726

Web : https://shunartdesign.com

Artist : ヒラタシノ

花のように、風のように

      ―ヒラタシノ東京個展に寄せて

 

 上海の画廊が15周年を迎え、記念カタログの製作をしていた頃、東京でヒラタシノの展示会をした。それは、東京画廊開館から間もない時期だった。今回再び東京で個展を開催する運びになったのも偶然ではない気がする。

 

 ヒラタシノは、日本各地で大きな壁画を手掛けながら、抽象画の領域で絵画を描き続けていた。彼女の作品は、冬の間に寒さに耐え、春先に大地を突き抜けて芽を吹き出している万物を想像させる。命の謳歌であり、生みの痛みであるかのように、静かな世の中に赤子の初泣きを力強くもたらしている。もろいようで強い新たな命の誕生だ。

 

 そうだ、いつも彼女の作品はそんな新鮮さを帯びている。

それは、あたかも旧知の友に再会した時のようでもある。とても懐かしいが、何処か居心地が悪い。だけどやはり嬉しい同窓会。長い時間の隔たりで完全に理解し合えないほど変わった隣りの席に座った幼い頃からの友達。

 

 春がやってきた。2020年から続くコロナ禍がそろそろ終息する希望を胸に上海と東京を行き来し、五度にもわたる隔離を経験しているが、コロナ禍が終息する前にウクライナで戦争が起きている事。そして、この時期に起きているとは信じ難い首に鎖を付けられたまま8人の子供を産んだ中国の江蘇省の話が中国の旧正月に暗い影を落とした事。隔離ホテルで旧正月をほとんど過ごした自分は鬱々とした気持ちを隠せなかった。

 

 間違いなく戦争は良くないが、欧米諸国の西側の民主主義がロシア籍の音楽家、文化人に対する制裁は度を越している。ましてや、犬や猫に対する制裁は明らかに愚行だとしか言いようがない。だが、情報化社会の中で、私たちの目は何を観て、何を聞くか、そして何を信じるか、とても判断に苦しむ。

ゼロコロナを目指している中国。ホワイトデーの昨日、深圳が再度ロックダウンした。上海は陽性者が一人でも出たらマンションを封鎖し、全員2週間マンションから離れられない。濃厚接触者が一人出たら、その人がいた場所全体が瞬間的に48時間封鎖される事態となっている。

朝起きたら急に家から出られずP C R検査を長い列をなしてまでやらされることへの疑念。コロナと共存を宣言して諸外国となぜここまで違う対策をしているか、理解に苦しむ。だが、ここ上海では皆がそれを容認している。

 

 今日もフランス租界地の職場の近くはガラガラの空城記だ。春なのに、私たちは冬を彷徨っている。冬眠している亀のように殻にこもっている。
 季節は移り変わって、花は咲き、新芽は吹き出ている。人間はどうだ。そんな問いかけをシノ作品はしているようにも見える。

 

 

          上海にて  Shun

 

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